相続税対策の養子縁組を認める 最高裁が高裁判決を破棄
2017/02/08
相続税の節税目的による養子縁組の有効性をめぐる争いで、最高裁第3小法廷は1月31日、東京高裁の判決を破棄し、養子縁組を認めた第一審判決を正当とする判断を下した。
争いとなったのは、亡Aと、その長男であるBの息子C(Aの孫)の養子縁組。平成24年3月、Aは妻と死別。その翌月、長男Bは妻と息子C、税理士を引き連れてAの自宅を訪問。その際、Aは税理士から「孫を養子とすることで遺産に係る基礎控除額が増えて相続税の節税効果がある」といった説明を受けた。
その後、養子縁組に係る届書が作成・提出された。しかし、この養子縁組について、「縁組をする意思を欠くものである」として無効を求めたのが、Aの長女と次女だ。
法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、一定数に制限されており、①被相続人に実の子供がいる場合は1人まで。②被相続人に実の子供がいない場合は2人までとされている。もともとAの相続人は、長男(Cの父親)、長女、次女の3人だったが、CがAの養子になったことで相続人は4人となったわけだ。
一審では、長女・次女の請求は棄却された。しかし、二審の東京高裁では、AとCの養子縁組は専ら相続税の節税のためにされたものであるとした上で、民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとして、長女・次女の請求を認める判断を下した。
一審・二審と分かれた判断に、最高裁第3小法廷は、「相続税の節税のために養子縁組をすることは、節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない」と判断。裁判官全員一致の意見で、長女・次女の主張を認めた二審判決を破棄し、控訴を棄却した。